乳幼児期の発達を表すときに、「2次元の発達」というものがあります。
2次元が発達するのは、1歳半〜3歳半ごろで、自分で自分をコントロールする力が育つ時期です。
自我が芽生えるため、イヤイヤ期や反抗期と呼ばれる時期と重なります。
イヤイヤ期や反抗期がなぜ起こるのか、乳幼児期の発達を知れば、対処法がわかり、見通しももてますよね。
私も2次元の発達について勉強してきたのですが、まず「2次元ってなに?」というところでつまずきました。
そこで今回は、乳幼児期の2次元の発達について、1次元や3次元も加えてわかりやすく解説していきます。
もくじ
1次元、2次元、3次元って何?

まず、1次元、2次元、3次元とはなにか?ということについて、お伝えしていきますね。

- 0次元=点
- 1次元=線
- 2次元=平面
- 3次元=立体
このように考えるとわかりやすいですね!
2次元の発達というと、ものごとを平面の世界で捉えられるようになることです。
つまり、大小や高低など2つのことを比較できる段階です。
さらに、同時進行ができるという、より複雑な思考が可能になります。これを「2次元可逆操作の発達」と呼びます。

「可逆操作」??よくわからなくなってきたぞ…。
「可逆操作」とは、条件が変わっても、もとの状態に戻ること(別の観点で物事を考えられること)を指します。
多面的な見方ができるようになっていく「可逆操作」は、発達において重要なポイントだと考えられていますよ。
順に解説しますので、一緒に見ていきましょう。
次元の発達段階について

まず、大まかに「次元可逆操作」の概要をまとめます。
障害児教育や発達心理学者であり教育者である田中昌人は、「次元可逆操作」の階層と、その準備段階である「形成期」の発達段階を区別しました。
「?」が浮かぶかもしれませんが、あとから詳しく解説しますので、さっと目を通して次に進んでくださいね。
これらは、厳密には個人差があって、この通りの発達にならない場合もあります。
それぞれの時期について、詳しく見ていきましょう。
1次元の発達(1歳〜2歳ごろ)

1次元形成期(1~1歳半ごろ)
1次元形成期は、歩けるようになり、全身運動をする中でバランスよく動ける力をつけていく時期です。

この時期には、「ひたすら同じことを繰り返す姿」がよく見られます。
私の子どもも、静かだな…と思ったらおしり拭きをひたすら取り出していたことがありました(笑)
絵を描くと、「点々」だったのがだんだん「線」になっていきますよ。
安全な環境のもとで、「繰り返しやりたい」という欲求を満たしてあげたいですね。
1次元可逆操作期(1歳半~2歳ごろ)
より複雑な思考が可能になり、スプーンや簡単なボタンかけなど、道具を使うのが上手になってくる時期です。

絵を描くと、線が行き来する様子が見られ、言葉も2語文が増えて急激に発達していきます。
「yes」と「no」の使い分けができたり、「自分のもの」と「他人のもの」がわかるようになったりしていきますよ。
この時期の子どもは、「~しよう」と促されると一度は「イヤ」と拒否する傾向があります。
イヤイヤ期と呼ばれる時期ですが、これも、自分と他人の区別がつき、自分の置かれている状況を理解できはじめている証拠とも言えます。
場所が変わったり、新しいおもちゃが出てきたりと、状況が少し変化するだけでも気持ちが変わることが多い時期です。
気持ちの切り替えや、こだわっていることに対して方向転換ができるような関わりで、次の行動に進めていけるとよいですね!
2次元の発達(2歳~4歳前後)

2次元形成期(2歳~3歳半ごろ)
大小、高低、長短、縦横、上下、あっちこっちなどの対の関係がわかるようになります。

「縦線と横線」や「円」を描いたりするようになりますよ。
身体の動きもスムーズになり、急に止まる、合図で急に走り出すなど速度の調整もできるようになっていきます。
「今」と「次」という概念も理解しはじめるため、「お片付けをしたら給食だ」というように、簡単な見通しがついていきます。
自分で簡単な見通しをもって調整する力が付くため、「自分で!」というこだわりも出やすい時期です。
以前のイヤイヤとは違い、「自分でやりたい!」という意思や「見通しが外れていた」という理由が出てくるため、気持ちに寄り添うことも大切になる時期です。
自分でできるようになったことを一緒によろこびながら、挑戦したい気持ちを満たしてあげられるとよいですね。
2次元可逆操作期(4歳前後)
動作や運動を自己調整する力がぐっと高まる時期で、ケンケンやスキップなどより複雑な運動ができるようになります。

「顔」や「全身」を描くようになります。
言葉を自らの行動につなげていけるようになっていき、友達との集団生活へと世界が広がります。
集団に入るころには「人にみてもらいたい、認められたい」という欲求が高まると同時に「注目されると恥ずかしい」という気持ちの葛藤が見られます。
これは、「自分」を相手がどのようにみているかという期待と不安があることを示しています。
まわりとの関係のなかで自分を見つめ直す力が育っていく時期なのです。
お手伝いなど周りの生活に興味をもてる活動を取り入れて、より複雑なことができるようになった喜びを一緒に感じながら過ごしていけると素敵ですね。
3次元の発達(4歳半~7歳前後)

3次元形成期(4歳半~6歳半ごろ)
大小、高低、長短と2つの観点で見ていた世界に、「もっと〇〇」や「中くらい」の視点が加わります。

この時期には「横顔」や「後ろ姿」を描くようになります。
「きのう・きょう・あした」「遠い・中くらいに遠い・うんと遠い」と時間や空間を連続の中で捉えて区別することができるようになっていきますよ。
気持ちの面では、「~だけれども、~する」ということが理解でき、それに従って行動できるようになります。
一方的な自己主張ではなく、思いと事実の違いを調整しようとする自制心が育つのです。
自分の基準をもって物事の善し悪しを判断する姿も見られます。
論理的思考の枠組みができつつありますが、まだ直感的思考の段階で、見たことや感じたこと(知覚)が優先されます。
大人と同じようなことを言いつつも、まだ直感で生きている子どもなので、その時々の気持ちに寄り添いながら過ごしていきたいですね。
3次元可逆操作期(7歳前後)
具体物を用いることで、知覚に惑わされることなく、筋道を立てて論理的に物事を考えられるようになる時期です。

見たままの姿を描くことができるようになっていきますよ。
「だんだん〇〇になる」から時間の概念が理解でき、「全部」と「部分」という包括関係も理解できるようになります。
友達関係が拡大し、「あの子のこんなところは苦手だけれど、こんなところは好き」というように、多面的な見方で接していくのです。
算数では、具体物がなくても、数字を見てイメージし、計算できるようになります。
また、「もっと速く」「もっと遠くへ」と目標に向かって練習し、上達し、目標の達成を喜びながら過ごしていきます。
いろいろな見方があることに気づけるような関わりを大切にしたいですね。
また、自分で目標を立てたり、振り返ったりする活動の中で、何かができるようになった喜びを共有していきたいですね!
まとめ

- 1歳~1歳半ごろ:1次元形成期は、同じことを繰り返したくなる時期
- 1歳半~2歳ごろ:1次元可逆操作期は、お箸などの道具が使え、なんでもイヤと反応しがちだが、環境の変化で切り替わることも多い
- 2~3歳半ごろ:2次元形成期は、自己主張ができるようになり、自分でしたい気持ちが強くなる時期
- 4歳前後:2次元可逆操作期は、周りの人の目を気にするようになる時期
- 4歳半~6歳半ごろ:3次元形成期は、自制心が育ち、論理的思考の枠組みはあるが、まだ直感に左右される時期
- 7歳前後:3次元可逆操作期は、直感に惑わされず論理的な思考ができるようになる時期
次元の発達は、子どもの発達段階を知るのに役立ちますね。
お子さんの状態や、この先の発達の道筋を知ることで、子育てに客観的な視点が加わり、それがあなたの支えになればうれしいです。